
「ステロイドを使っていてはアトピーを治せない!」 「アトピーがこんなに悪化したのはステロイドの悪い毒が蓄積されたから!」あの頃はそんな風に思っていたが・・・。
ステロイドを止める?
アトピー性皮膚炎といえばステロイドと言われる程、この両者の関係は切り離せません。
それは喘息やリューマチ、膠原病のようなステロイドがメインとなる治療薬の疾患よりも感情の根が深いようです。
30歳の時、私はステロイド離脱を試み、強烈なリバウンドを体験しました。
「ステロイドを止めない限りアトピーは治せない!」
「ステロイドの毒が蓄積された!」
そんな思いからでした。
ところで、どうしてこんな壮絶なリバウンドを食らってしまったのか?
それは、15年以上使い続けてきたステロイドを一気に切ったからですね。
ステロイド拒否症
リバウンドを体験中、私は極端なステロイド拒否症に陥りました。
「ステロイドで廃人に!」
あの時代、一部の民間療法はかなり過激な表現を使う一方、マスコミもステロイドバッシングを煽る報道を繰り返していました。
実際、ステロイドで廃人が出たかどうかは別として、自分がリバウンドを体験すると急にこの言葉が真実味を帯びてきたのです。
「ステロイドで死亡!」と言う客観的な表現ではなく「廃人!」という抽象的な言い回しから、返って恐怖心を刺激されました。
「取り返しのつかないことをしてしまった・・」
「あんなクスリさえ使わなければ・・・」
ステロイドを使い続けた自分を責め続けました。
寝ても覚めても、考えるのはステロイドのことばかり。
ステロイドが憎い。
ステロイドを出し続けた皮膚科医が憎い。
ステロイドを忌み、製薬会社の工場を爆破したい衝動に駆られました。
だからどんなにリバウンドが苦しくても、ステロイドは使いませんでした。
「ステロイドは安全な薬です」
医者の説明は「先物取引は安全な金融商品です」と言う勧誘と同レベルも聞こえました。
リスクを取る意味がない
「もうステロイドは絶対に使わない!」
結局、私はリバウンドを体験後、一度もステロイドを使うことなくアトピーを治しました。
しかし、私のこんなやり方はもはや時代遅れです。
ステロイドを敵視した私のやり方は効率が悪いので、今では参考にはなりません。
このことは、ステロイドを弁護するために言っているのではありません。
ステロイドを一気に中止すれば、リバウンドを食らう可能性は高くなります。
そしてリバウンドを食らえば、今までアトピーが出ていない箇所まで劇的に悪化します。
その結果、皮膚は血と膿が入り乱れて全身ズルズルになり、リンパ節が腫れ、脱水症状を起こす危険もあります。勿論、夜は眠れない。
こうなると、もう精神的に普通でいることはかなり難しくなります。
こんなリスクを、自ら背負い込む必要はないのです。
実際、リバウンドを起こせば、毎日の生活の質は確実に落ちます。
不登校や休学、会社を辞めたり失恋したり、寝たきり状態に陥ることもあるでしょう。 私自身、リバウンド中は会社を80日以上も欠勤しています。
くどいようですが、私はステロイドを擁護する立場の人間ではありません。
なので、今さらステロイドが「悪魔の薬」かどうかなんてのはどうでもいい話です。でもステロイドを一気に切ったことだけは後悔しています。
「ステロイドは悪魔の薬」
当時の私にとって、この表現こそ悪魔そのものだったのかも知れません。
では、次はその「ステロイド呪縛」から解放される話をします。
ステロイド呪縛からの解放