その後、私のアトピーは良くなったり悪くなったりを繰り返し、ゆっくり、確実に悪化した。
それは何かをすると良くなり、何かすると悪くなる。と言った因果関係とは違うように思えた。
「治った!?」と思ったことは何度かあった。軟膏を塗らなくても、普通に過ごせる時期もあったからだ。が、痒みが完全に消えることはなかった。
再び痒くなった時は前より痒くなっているか、範囲が広がっているかのどちらかだった。
痒みが慢性化したのは、大学受験を控えた頃だった。
皮膚科では相変わらず、軟膏を処方されるだけの治療が続いていた。
ちなみに、この頃の私は自分の使っている薬が何なのか?全く知らなかった。いや、知らないというより、「関心が無い」の方が実感に近い。
当時は患者の大半が処方された薬をそのまま使っているだけで、それがステロイドなのかどうかさえ知らなかった。
アトピー患者に対して説明もなく、最強のステロイドを出し続けた医師が訴えられて裁判沙汰になったのは、まだまだ先の話。
一方、私は「これで様子を観よう」と言われるので、とにかく様子を見せるため律儀に通院を繰り返していた。
医者に対する不安が芽生え始めたのは、通院してから約1年が経過した頃だった。
チラッと患部を診た後はひたすらカルテに文字を埋めるだけ。そんな治療が続いていた矢先、医者はもう患部も診ず、私と視線すら合わさなくなった。
それは敢えてそう振舞うことで「もう何も聞くな」と意思表示されているようで、会話そのものを拒絶するような雰囲気だった。
「はい。これ塗って様子をみよう」
処方される軟膏は定期的に変わったが、この最後のフレーズだけは不変だった。
が、様子を観るだけの治療が続く限り、患者は治療代と薬代を支払い続けなければならない。しかも受験生にとっては、通院に要する時間も惜しい。
ある日、待合室で順番を待っていると、一人の女性がこんな風に言うの聞いた。
「今日は薬だけでお願いします!」
すると、受付の女性いわく。
「〇〇さん、今日は薬だけで!」
女性は処方箋を手渡され、窓口を後にした。
「薬だけ!?」
「そんなのアリ?」
考えてみれば、これは理に適っている。診察と言っても患部は診ないのだ。だったら薬だけで十分ではないか。
「これ、エエやん・・・」
早速、私もマネてみることに。すると、すんなり処方箋が手渡された。
「よっしゃーっ!」
診察無し。薬だけパターン成立!
その後、いつもこのやり方が通用するとは限らなかった。が、皮膚科で軟膏を貰う習慣は、もう私の生活の一部になっていた。