振り返ると、ここが分岐点だった。
最初に、アトピーと診断されたのは高一の夏。
風呂上りにテレビを観ていると、首が痒くなった。
それは蚊に刺されたような一点集中型ではなく、もう少し広範囲の痒み。皮膚の表面ではなく内側がムズムズする感じだった。
「コレ、もしかしてアトピー?」
今ならそうなるだろうが、当時は事情が違う。
当時はまだアトピーを知らない人の方が圧倒的で、事実、自分もそうだった。
周囲にアトピーの人はいなかったし花粉症もない。アレルギーと言えば「喘息」が全盛の時代だったと思う。
「大したことないだろう」
それまでの経験から、少しくらいの痒みなら時間が経てば消えるし、実際、この時は何もせず消えた。
なので翌日になると痒みのことはすっかり忘れた。普通に授業を受け部活して帰宅。問題ない。痒いのは入浴後の1時間限定。そんな毎日が続いた。
「変だな?」
そう感じたのは初夏。
鏡で首を確認すると、乾燥してカサカサしている。短時間だが毎晩、同じ所を掻くので当然か。
「やれやれ・・・」
まるで他人事のように皮膚科へ行ったのは、夏の高校野球の地区予選が始まる直前だった。
地元にある近所の皮膚科だった。
特に検査などはせず、首を診るだけで病名も知らされなかった。
「これで様子をみよう」
外用薬が処方され、その日の診察は終わり。そんな感じだった。
その日の入浴後、処方された外用薬を塗ってみた。サラサラした感触の軟膏。皮膚によく馴染んで違和感はない。
しばらくすると、痒みは見事に消えた。
「やっぱり薬だな!」
そして数日後、入浴後の痒みは完全に消えた。
「一件落着!」
問題は解決したかのように思えた。