アトピーでは死なない?
大変なのはそれからだった。
総合病院の皮膚科に駆け込むと、医師は戸惑いながらこう言った。
「ココ、皮膚科ですよ・・・」
彼の言い分はこうだ。
「外傷なら外科へ」
私の両目は大きく腫上がり、まるでKO負けした直後のボクサーだった。
妻が経緯を説明すると、医者は内科に連絡した。
「内科?」
私達は、もう訳が分からず混乱した。
「感染症の疑いがあります」
検査を受けた結果、掻き壊した傷口から黄色ブドウ球菌が侵入。敗血症をおこしていた。
結局、抗生物質の点滴後、問答無用の緊急入院。
数日後、
小康状態に入ると、医者は丁寧に説明してくれた。
「心臓は大丈夫でした」
「心臓?」
心臓がアトピーと何の関係があるのだ?
「アトピー自体は死に至る病気ではありません」
「が、合併症では死に至るケースもあります」
「細菌が心臓の弁で増殖すれば厄介でした」
好転反応どころの話ではない。
「ところで、どうしてここまで放っておいたの?」
私は返答に窮した。
放っておいた訳ではない。それどころか私は必至で脱ステロイド療法、つまり「治療」に専念していたのだ。
1週間後。
顔の腫れは消えた。と同時に栄転の話も消えた。
「またか・・・」
今までだってそうだ。
アトピーはいつも大切な時にやって来て、何もかも台無しにする。
手を伸ばせば届きそうな願いや幸福。そんなチャンスが消えてしまう経験に私はもう慣れていた。