道のり21 退院

入院中は、時間が有り余っていた。

この間、私は病院に置いてある東洋医学関連の本を熱心に読み漁っていたのだが、そこには「なるほど・・・」と思うことが沢山書いてあった。

昭和生まれの自分は、西欧文明の価値観にどっぷり浸りながら育った。

ディズニーランドにハイウッド映画、ステーキにハンバーガーに対する愛着はあっても、東洋的な文化に対する関心は薄い。学校で英語を学ぶ理由もそれが世界の共通語だからで、医学と言えば自ずと西洋医学のことだった。

ところがいろんな医学の本を読むと、西洋医学がアトピーとは相性が良くない感じがしてきた。

例えば、西洋医学は理論を重視するが、これは化学反応による実験を繰り返すことで薬や治療法を見出すやり方で、感染症の治療や外科手術などの分野では最強である。

ところが、病気の中にはいくら化学的な実験を試みても原因が特定できないものがあることも事実。いや、現実的には原因が特定されているのはごく僅かの病気で、大半の疾患はいまだ原因は特定されていない。

とりわけ生活習慣病と呼ばれる慢性病の大半は原因不明で、アトピーはその典型だ。

一方、東洋医学は経験を重視する。

身体のツボを刺激したり、食べるものを組み合わせてみたりと。

ただ、これには個人差があるため普遍性には疑問が残るが、現実的に私のアトピーは断食(絶食療法)で確実に良くなった。

この事実をどう解釈するか?

高雄病院に入院してから、ひと月の時間が流れた。

それは4度目の絶食療法を終えた日で、その日は朝から何かが違っていた。

「退院する」

病院に残ってこのまま治療を続ける選択肢はあった。が、私は自宅で療養する道を選んだ。

不都合なことがあった訳ではない。
むしろここでの入院生活は快適で、アトピーも格段に良くなった。

それでも私は自宅に帰り、そこで一か月の療養期間を過ごしてから職場に復帰する予定を立てた。

その理由はこのまま入院生活を続けると、そこから抜け出せなくなる不安を感じていたからだ。

事実、入院中の患者の中には保険給付金を目当てに、期間ギリギリまで入院、その後は職場に復帰するも、その後はまた入院。これを繰り返している患者もいた。

入院治療はアトピーを治す手段であって目的ではない。

この時、妻のお腹の中には長女が宿っていた。

「潮時やな・・・」

主治医と相談した結果、私は退院することにした。

まだ、完治した訳ではない。が、私の中に「完治」への自信が芽生え始めていたことも事実である。

これまで、私のアトピーは良くなったり悪くなったりを繰り返しながら確実に悪化した。

と言うことは、完治への道はその逆。つまり、良くなったり悪くなったりしながら確実に治る。

私が高雄病院をひと月で退院した理由もそこにあった。