道のり13 民間療法まっしぐら

あの頃の私には、「生活習慣を見直すことでアトピーを治す」と言う発想が無かった。

そしてこの頃になると、さすがに「何かが間違っている・・・」と薄々感じ始めていた。が、その「何か」が分からない。

その「何か」を求めて、私は「アトピーに効く!」と言われるものを手当たり次第買い漁った。それを見つけることで、この地獄の毎日から抜け出せる気がしていたのだ。

ちなみに私の経験からすると、アトピーと言う病気は何かをキッカケにしてトントン拍子で治るような類のものではない。

が、当時の私は、悲しくなるほどこの現実が分かっていなかった。


インターネットやSNSのない時代、情報収集は専門書か健康雑誌くらいのものだった。

「かゆみがピタッと消える!」
「頑固なアトピーがみるみるキレイに!」

今なら薬事法で完全にアウトなキャッチコピーも当時は普通に使われていた。そして「治る!」とか「治った!」と言う表現のアトピーグッズには真っ先に飛びついた。

温泉療法を始め、数々の民間療法にも取り組んだ。

「溺れるアトピー患者は藁をも掴む」

まさに、そんな感じだった。

「さすがにコイツはヤバい・・・」と感じながら、ハマってしまったこともある。

「除霊でアトピーが消える」

宗教団体が母体の療法だった。

最初は「そんなアホな・・・」と思っていた。が、父も祖父も皮膚病で苦しんだ現実を振り返ると、「先祖の霊に成仏して頂くこと」が、他の何よりも大切に思えてきた。

除霊は1回3万。

それでもこれで全てが終わるなら、「あーあ、騙されちゃった」で済む。ところがこの団体の手口が巧妙だったのは、除霊が1回では終了しないことだった。

つまりご先祖様の霊に成仏して頂くには、繰り返し何度も除霊を受ける必要があった。

これは単純に料金の加算、つまりリピーターになることを強要されるシステムを意味する。

「除霊」の儀式は1回約15分。

福娘のような恰好をした若い女性が、祝詞みたいなものを読む。

「信じる者は救われる」なんてことは無く、アトピーが良くなる兆しは全くなかった。

そんなある日、除霊のためにマンションの一室に到着すると、部屋のドアに鍵が掛ったまま誰も出てこない。

携帯なんてまだ無い時代。仕方なく公衆電話から連絡を入れた。

すると、

「ゲンザイ、コノデンワバンゴウハ、ツカワレテオリマセン、ッーツーッー」

「・・・・・・・・」

数日後、その宗教団体の代表が逮捕されたニュースを知った。

詐欺罪とかの犯罪ではなく、確か、婦女暴行だったと思う。

ちなみにこの代表は今、名前も容姿もすっかり変えて新しい団体を設立。新聞広告まで出して精力的に活動している。

あの頃の私は、間違いなく「治る!」と言う言葉に飢えていた。

私は、医療機関では「治る」と言われた経験がない。「治らない」とは言われないが、「治る」とも言われない。

ところが民間療法は違う。

根拠がなくても、平気で「治る!」を連発した。

実際は、根拠が無いからこそ「治る」を連発できるのだと思う。

一方、アトピーが顔に出てから、私の眉毛はどんどん薄くなった。

眉毛が消えると、人相も変わる。

日に日に薄くなる眉毛から逃避できる先は、医療機関ではなく民間療法や宗教団体の「治る!」だった。