ひと月ぶりの自宅。当然、何もかも入院前と同じだった。が、私自身は変わっていた。
「何が変わったのか?」
それを簡単に説明するのは難しいが、今までとは周りの世界が違って見えた。
「これだけは人任せにできない」
アトピーの場合、一度良くなった症状が社会復帰後に悪化、間もなく再入院となるケースが多いことを、入院中に嫌と言うほど見てきた。
会社に復帰後、再入院で周囲に迷惑を掛けることだけは避けたい。
もう栄転の話は消えている。今更ジタバタすることはない。
自宅での療養が始まった。
療養と言っても、横になって安静にしていた訳ではない。全く逆。とにかく歩いた。後は事前に決めたスケジュールを淡々とこなすだけ。
特別なことは何もしなかった。
いや、特別なコトやお金の掛かるコトほどアトピーを治せない現実は、今までの体験で証明済みだった。
ステロイドも抗ヒスタミン剤も一切使わず、高雄病院で処方された漢方薬さえ飲まなかった。
それはアトピーを治すための治療というよりは、健康を取り戻すための試みに近かった。
「快食」「快便」「快眠」
コレを得るためには、具体的に何をすればよいのか?
ひとつひとつを、毎日の生活の中に落とし込んでみた。
何を、どれだけ、どんな風に食べれば便通は整うのか?
試行錯誤は続いた。
誰かのアドバイスに従う訳でもなく、どこかの本に書いてあることを参考にする訳でもない。
自分の身体と直接向き合う。
そして、やったことに対する結果を注意深く観察する。全てが試みなのだ。「良い」とか「悪い」とか、そんなことは考えない。毎日毎日、ただやるべきことを淡々とやる。これだけに終始した。
すると、それまで一般的に常識だと思われている健康法の多くが、必ずしもそうではない現実に直面した。
例えば食事。
一般的な健康法からすると、食事は1日3食、規則正しく食べることが良いとされる。
しかし、自宅での療養中、私の身体は違う答えを出した。
その答えはこうだ。
食事は本来、規則正しく3回食べるようなものではない。「お腹減った!」と空腹を感じてから食べるのが自然なのだ。だからお腹が減ってもいないのに、規則に合わせて食べる必要はない。
要は、食事なんてものはライフスタイルによって、一人ひとり違って当然なのだ。
便通にしてもそうだ。
一般的には「便秘解消の食材」みたいな言い方をされることが多いが、私の経験からすれば、便通は食べ物の「内容」以上に「量」が影響する。
その証拠に同じものを食べても、その「量」によって固くてコロコロした便になることもあれば、鳥の糞のようにベタベタした便になることもあった。
爽快感を伴う太くて長い1本の便、これをスポーン!と出すにはどうすればいいのか?
最終的に、私の努力目標はこの一点に絞られた。
理由は単純。
このような便が出ることで、皮膚の炎症がどんどん消えることが分かったからだ。
当然、皮膚の炎症が消えれば同時に痒みも消える。
とてもシンプルな流れだった。