リバウンド?ただの悪化?当時は区別が付かなかった。
脱ステロイド療法が始まった。
身体に溜まったステロイドの毒を抜く。
その間、漢方薬と健康食品で回復を目指す。
一見、理に適った療法に思える。
ところが、
保険の効かない漢方薬や自然食品は高額で、回復が長引くほど患者の負担が増える仕組みだった。
二種類の漢方薬と六種類の健康食品。
いくら治したい一心とは言え、その費用は家計を圧迫した。
実は、漢方薬もこの時が最初ではなかった。
既に「アトピーに効く!」と言われるモノは手当たり次第買い漁っている。やらなかったのは自分のオシッコを飲む「尿療法」くらいのものだ。
思い出したくないが、怪しい宗教にも手を出した。
当時の私は、それくらい追い詰められていた。
3週間後、嫌な臭いのする体液が流れ出した。
不安になった私は、カウンセラーに連絡を入れた。
「思った以上に毒素が多い」
「でも、これが好転反応です」
「・・・」
「毒素が多い?いや、観てないだろ?」
彼によると、この体液こそ「毒」の正体らしい。
「これからが本番!」
「一緒に頑張りましょう!」
この言葉を聞いて、私はギョッとした。
「本番?」
「一緒に頑張る?」
が、もうスタートは切っている。
今更引き返すことはできない。
私の不安を遮るように、彼はさりげなく追加の健康食品を勧めることを忘れなかった。
1週間後。
アトピーは劇的に悪化した。
皮膚はズルズル。
症状が出ていなかった箇所まで爆発。全身火傷のように赤く腫上ってしまった。
この日以来、私は殆ど眠れなくなった。もう仕事などできる状況ではない。上司に連絡を入れて長期欠勤の手続きを取った。
事態が急変したのは、その日の夜。
熱が40度近くまで上昇。
顔全体が赤い斑点で覆われ、関節が曲がらなくなった。
翌朝、変わり果てた私の姿を見て、パニック状態に陥った妻がカウンセラーに連絡を入れた。
「大変なんです!」
「熱が40度近くあるんです!」
すると、
「それ、好転反応です」
「もう少しの我慢ですから」
「ステロイドが出尽くせば治ります」
あり得ない・・・
いくら素人でも、これが「好転反応」でないことくらい判る。
カウンセラーの態度が急変したのはその直後。
「もう少しで治るのに!」
「一緒に頑張ってきたのに!」
「治す気がないなら仕方ない!」
今までの態度が急変。
最後は吐き捨てるような口調だった。
この言葉を聞いた瞬間、私は夢から醒めた。
「治す気がない?」
「一緒に頑張ってきた?」
「あんたが何を頑張ったのだ?」
私はようやく、自分がネギを背負ったカモであることを自覚した。